狂言劇場その七
12月2日夜7時~世田谷パブリックシアター
ずっと前に『狂言サイボーグ』という萬斎さんの本を読んだ。
エッセイと写真集。
いかに長く厳しい修練を積まれてきたか、圧倒される内容だった。
ご自分のことを「サイボーグ化」するという言葉が印象的だった。
先日、授業で『山月記』を指導。
その一環として万作の会のDVD『山月記』を生徒に見せた。
緊張感漲る朗々とした語り、闇に浮かぶ三日月のステージ、
原作に忠実であろうとする洗練された演出が心に迫った。
今回、萬斎さんが「ボレロ」を演じると知り、どういう舞台に
なるのか見たくてたまらなくなり、S席チケットを入手。
ベジャールと比較するのはアレだが、
萬斎さんのボレロは、「死と再生」のテーマが強烈に打ち出されて
いたように思う。既存の振付とは全く異なる鎮魂の独舞。
希望の光。今の日本に必要なもの。
白装束に緋袴。そぎ落とされたシャープな姿に釘付けになった。
一瞬の動きも見失ってはならぬと見る側にも緊張を強いる。
一条の光の中から次第に浮かび上がってくる萬斎さんは
「天照大神」の天の岩戸アメノウズメを彷彿とさせた。
狂言とは、まさに神事。
スモークが効果的だった。
ピアニシモから徐々にダイナミックな躍動感へと展開していく中で
萬斎さんのサイボーグな身体が、高潔な神の化身となり
天翔ける・・・
最後に、おもわず、「おお・・・っ」と声を発してしまった。
精緻の極み。
生き方にブレのないプロフェッショナルな光を見た。
HPから引用
◆演目紹介◆
Aプログラム “舞”
小舞『七つ子』『暁』『鮒』
狂言師の鍛え抜かれた身体が、足の運ビ、体の構エといった所作を通じてしなやかに情景を描写する小舞。『棒縛』で太郎・次郎冠者が縛られたまま舞う『暁』『七つ子』と、稀曲『勧進聖』に登場する鮒の精が躍りはねる姿を舞う『鮒』をおとどけします。
小舞 『七つ子』 [出演] 月崎晴夫
小舞 『暁』 [出演] 深田博治
小舞 『鮒』 [出演] 野村萬斎
『棒縛』(ぼうしばり)
盗み酒をしないようにと主人に両手を縛られながらも、苦心と工夫の末に酒盛りに至った太郎冠者と次郎冠者。すっかり気分の良くなった二人が扇を使う手を封じられて舞う姿には、遊び心に裏付けられた自由さを感じさせます。狂言の代表作の一つで、海外でも数多く上演されています。
[出演] 太郎冠者・・・野村万作
主・・・高野和憲
次郎冠者・・・石田幸雄
『MANSAI ボレロ』
バレエ音楽の枠を越えて世界で愛されるラヴェル作曲の「ボレロ」。
同一のリズム・メロディーながらも次第に聴く人々を昂揚感へといざないます。
無辺に拡がる宇宙観に、日本芸能の神髄である『三番叟』を重ね合わせながら、
野村萬斎による新振付と独舞で挑みます。
[出演] 野村萬斎