『悩むことはない』金子兜太氏
戦争を生き抜いていらした方々は、達観していらっしゃる。
水木しげる氏、金子兜太氏。知人で満州から引き揚げていらした方々。
すべからく、生きる力に満ちあふれている。
毎年、3月には横浜の某大学でお会いできていたが、
今年は、大震災のために急遽取り止めになった。
来春にはお会いできるかどうか、生徒次第。
いつも金子先生のおそばには人が集まる。
老いも若きも分け隔てなく、自然体で気さくにおおらかに
お話して下さり、大きな笑い声と度量の大きさで包み込む。
エラソーな、権威を誇示するカケラなどみじんもない。
(田舎にいるんだ、
ちょっとした権力を肩に風きるハンパものが。)
ホンモノの人は、全くそうじゃないので、
田舎の肩書きさまをみると、バッカじゃないかと笑ってしまう。
教育現場然り、行政職然り。
92歳になられる金子先生の『悩むことはない』を読むと
心がスカっとする。
俳人は、こうでなきゃ。
価値観も人生観も、大いにうなづける。
一節に
「戦争中に偶然命が助かったときも、幸せという受け取り方は
しません。名誉ある賞というものをもらっても、幸せだなどと
思わない。幸せという言葉がもとから念頭にない。
だから、不幸という言葉もない。幸・不幸とはつまり、
便宜的な概念なんだ。だから、幸・不幸にとらわれて
悩むことはない。」
今まで、些細なことで、幸福と言ったり不幸と嘆いたりしていた
自分がとても浅はかで小さい人間に思え、恥ずかしくなった。
こういう態度で、何事も受け入れて生きよう。心構えとして。
秩父の狼、巧まざるユーモア、いいわ。金子兜太先生。大好き。