narinattaのスイートプラン

気ままなライフ日記

初夏の句


さくらんぼ打ち明け話など聞いて

紫陽花やまだ泣いている小林君

農場の芝生刈られて梅雨に入る

一着の馬冷やしゐるばんばかな

花のごと洗膾(あらい)となりて水の底

皿一枚洗膾のいのち透きとほる

熟れやすき地球の皮膚や夏の雨

献立は鯖の味噌煮と花一輪

アリバイのない3時間短き夜

勾玉のかたちに眠る短き夜

教室はプールの匂い起立!礼!

湯加減はいかがですかと夏の月

海霧ひたひた三島由起夫の潮騒

子のごとき同僚につぐビールかな

長梅雨や赤いべべ着たお地蔵さん

挨拶はほどほどが良し生ビール

ゆでこぼす横文字の名の夏野菜

新樹光すべての馬に名前あり

新樹光生徒の椅子は木の匂ひ

泉湧く眠れぬ夜はひたひたと

出刃の冴え鯖の背骨の白きかな

病気せる夫の鎖骨冷や奴

若葉寒鉄扉の奥の非常口

ちぎり絵の和紙の薄さや花空木

病む夫の手の透き通る花いばら

小匙にてすくふスープや鉄線花

小満アンモナイトの石しづか

屹立す泉の底の摩天楼

庭下駄のゆるく鳴る音沈丁花

耳たぶの大きな男風光る

朧月何か約束したような

手のひらにすくふ金魚のおちょぼ口

青蜥蜴目をみひらきて水底へ

乙女らの消えたる崖や大蜥蜴

校門に車の列や梅雨寒し

女生徒の羽化始まりぬ初夏の窓

オブジェてふキャベツの山の多面体

筍の刺身をつまむ利休箸

竹落葉水に集まる鳥けもの

薫風やカスタネットの赤と青

尻光る蟻の登りし一揆の碑

黒板に立志と書けり新樹光

グランドの太き白線夏はじめ

足裏の固き地球や春の虹

はつなつの名水百選見つけたり

石像の目の悲しさや五月雨

夏草や白球を追う野球帽

ハンカチに香草くるむ帰り道

卓袱台の硝子に透けし夏料理

青蜥蜴地球の皮膚の尻尾振る

明け方のパセリ光を撥ね返し

葬送の車横切る山桜桃(ゆすらうめ)

巨樹倒れ水面に映る苔の花

包まれる水の記憶や金魚玉

新緑の匂ひを連れて帰りけり