チョコレート考
チョコレート考
人様からいただいたとか 自分で作ったとか
1かけのチョコレート 御国は問わず語り
魔術師…否、魔法使いを前に
科学者どもは首を捻って
彼らの信じている「魔法」では暴けない
トリックを捜している
甘みへの欲望は 実はもう戦争の鏑矢
終わりはない というよりも
見えているものが見えない
額をパヴェにこすりつけ ココアのほこりにまみれている
しあわせな隷属を約束されてしまう私たち
もう一度言おう 私たちは勝てっこない
支配したと思った次の瞬間
既に欲望に踏みつけられている
舌は甘いものばかりを求めて 猫なで声で
舌鼓を打ちたがるから
常に受け身 常に被支配
私たちは欲望を満たせないわけじゃない
但しフリーダムではなくリバティだけで
堪能している臣民
支配欲はリサイクル可能のお得な自慰行為
征服欲は支配される快感を知った後のお楽しみ
「包むもの(クーベルチュール)」と一緒に
とろとろに融けて着崩れて
意識混濁のセレクション・ノワール!
口に入れたら固形物
舌に乗ったら半固形物
「おあずけ」を命じられて広がる
緩やかな流動物に口いっぱいに広がる
唾液は消化液じゃなくて、生唾
痙攣?武者震いでしょう
逢い見るまでの推量 結婚直前のつがい
薬はほとんどみんな後で効いてくるもので
注射は子供か、振袖を切り落としたサラリーマンのもの
チョコレートがいつもより素早く
融けるくらい温かければ
媚薬なんてプラシーボに等しくてよ
状態変化でゆっくり融けて
いっぱいに広がる前に
夢見るはいつも、かすか数秒先の未来
なめては駄目 口に含んで 抱き込んでゆく
自分で包み込むことが
「理解する」ってことなんだから
ほら 効いてきた 天の美禄が
「包むもの(クーベルチュール)」を脱いで纏う一本の糸
顔を赤らめるのは
アルコールのせいじゃない
それだけならあのつまらない「魔法」使いどもに
唱えさせて、嘆かせて、
彼らから細胞膜を奪うだけ
障子の奥に移る
擬音語でしか表せないシルエット
視覚は奪われていないけれど
外耳のほうが可視域は広い
カカオ色のサキュバス(インキュバス)に 狭い口腔の中で飛ぶための空域を
エナジーの吸い口を提供する
「魔法」使いさんたちへ
そろそろ謎は解けた?
脳が渇くか 固形物が
融けてしまわないうちにして頂戴
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この詩は、私のかわいい男の子が書きました。