narinattaのスイートプラン

気ままなライフ日記

夏十句/ 海の道



両の手に焼きたてパンと苺ジャム

人体は一枚の皮膚衣更え

ガラス窓大夕焼となりにけり

七夕の空いっぱいの願いかな

短夜や帆船瓶を抜け出せず

離陸する夕焼の山河置き去りに

葉山葵をくるむ新聞木のポスト

記念館出て地熱浴ぶ清張忌

メタリックカラーの新車こがね虫

黄金虫異国の銅貨錆びてをり

熱帯夜けものの息を吐き出せり

少女らの朱夏のクレープ闊歩せり

ほや剥けば夕陽の海が迸る

草を刈る肌に寄り添う花一輪

木登りのできそうな木だ草を刈る

山あれば水底もあり鮎光る

山の音水の音して鮎の歌

一椀の苔の翠や山桔梗

鮎釣りの胴しなやかに水くぐる

白玉や妻には妻の生きる道

行きづりの恋などもなくサングラス

しぎ焼きや炊きたての飯よそひけり

足指の父にそっくり藍浴衣

迎火をゆるくかこみて物言はず

D51の赤錆びている終戦

廃校の錆びた鉄棒終戦

透明な傘に傷あと終戦

五分刈りの少年の首終戦


夏菊や北の涯てなる軍馬の碑

読みかけの本食べかけの青林檎

ゆきゆきて海の道なり凌霄花(のうぜんか)

掛時計ふと止まりたる清張忌

玉砕の海蒼々と月見草

射爆音響く海背に墓洗う

迎え火をゆるく囲みてもの言はず

色鳥や赤き幟の村歌舞伎

色鳥の水の器に灯のともる

人の世は写し絵のごと夕涼み

軒低き見せ物小屋の秋簾(あきすだれ)

15日生まれの憂ひ盆の風

志望書の推敲終えし秋扇

教え子のほほゑみ揃ふ秋扇

天心へ弾けてこぼる鳳仙花

幽谷の月にも触れよ山桔梗

女生徒の羽化始まりぬ初夏の窓