『赤い鳥逃げた?』
ブルースの似合う大人だった。
松田優作さんや桃井かおりさんの兄貴的存在という
一つのカテゴリのイメージで
ずっと一本の線で映画を支えてきた
原田芳雄さんが逝去された。
私の映画遍歴の中で
ある意味、エポックメーキングだった『赤い鳥逃げた?』
今まで観てきた映画とは異種な匂い。
それからしばらくATG専門館や名画座で繰り返し観た
青春時代だった。
全共闘世代の幻想と絶望の日々、
『あらかじめ失われた恋人たちよ』の緑魔子、石橋蓮司、
唐十郎、寺山修司、天井桟敷・・・
石川セリの「八月の濡れた砂」
あの時代の渇いた独特なエネルギーに満ちた空気を思い出し、
胸がせつなくなる。
もっとも、私が上京したころは、天井桟敷も
状況劇場も赤テントもすでに下火になっていたのだが。
その幻を追うように、
新宿の花園神社を探して歩いたことも懐かしい。
さっき、TVで誰かが言ってた
「人には線と点のつながりがあると・・・」
職場やなんかの一過性の人間との接点が「点」
家族、友人、などは「線」
私にとって、ブログを通じて知り合った何年来の
友人は「線」であり、大事にしていきたい。
職場の人間関係の中でこの人とは「線」・・ずっとつきあって
いきたい人。
オレサマな困った「トッチャンボウヤ」みたいなのは「点」と
意識的に区別している。どうせその場だけの関わりだと思えば
ハハンと傍観し鼻で笑っていられる。
かかる火の粉を払いつつ(笑)
原田さんの演技がどうのこうのじゃなく、
彼の映画人生をずっと「線」で観てきた者にとって、
彼の死は
「一つのカテゴリの終焉」だ。
佐藤慶さんにも感じたような揺るぎない、
大きな存在を失ってしまった。
心よりご冥福をお祈りします 。