〇俳句の選を終えて
俳句は世界最短の詩である。五・七・五と
いうリズムの魅力は、誰にでも気軽に作りたく
なる形をしているということだ。
日記の代わり、ツイッター、仲間作り、自
然に親しむなど、俳句を作る習慣を持てば、
自分の世界が少しずつ広がって見えてくる。
だが、とっつきやすいが、反面難しさを痛感
する場面もやって来て、それを乗り越えて、
俳句の本当の楽しさを味わえる。
最優秀賞 〇〇高校二年 ○○○〇さん
告白をされそうなほど花吹雪
例えば校門前の満開の桜が、一瞬の内に
吹雪となり、場面が転回し、舞台が立ち現れ
る。青春の劇的なステージの予感。
誰にでも共鳴し得る佳句である。これが
「告白された」のではなく「されそうなほど」
という言葉のチョイスでなかったら、最優秀
賞にはならなかった。
上村一夫氏の画風が浮かんでくる。桜舞う
下り坂で、ペダルを踏んでいる少女のドラマ
チックな桜吹雪のイメージ。
優秀賞 ○○高校二年 ○○○○さん
蚯蚓突く子らの瞳に宿る鬼
蚯蚓の季語は夏。種類によって大きさは異な
るが10センチ前後。日中は土中で静かにし
ていて、夜になると活動する。なのに句中の
蚯蚓は、何をしにここに出てきて、子ども達
に突かれているのか。突くほうも突かれるほ
うも共に鬼を宿すという不条理な生の様相が
凝縮している。本来、純粋無垢な子どもの中
に潜む鬼。意外性のある句として評価された。
優秀賞 ○○高校二年 ○○○○さん
始業ベル聞きしチューリップの孤独
校庭の花壇に並び咲き揃い、生徒たちの目
を和ませていたチューリップが、始業ベルと
共に一瞬のうちに取り残され、孤独を感じて
いるということか。あるいは作者自身が異質
な存在として教室の中で孤独感を強めている
のか。深いものを感じさせる体言止めの佳句。
群衆の中の孤独というのは、古来世界の文学
でも追求されている。
チューリップという季語の取り合わせが妙
味でもある。
優秀賞 ○○高校二年 ○○○○さん
割り箸を割る音澄みて秋立ちぬ
「秋立ちぬ」の季語は、立秋のこと。二十
四節気の一つで、新暦八月七日ごろにあたる。
秋になる日とはいえ、実際はまだ暑さが厳し
い。しかし朝夕などは、秋の気配がどことな
く感じられる。それを、割り箸を割る音で秋
を直感したという繊細な感性が、この句を際
立たせている。
「秋澄む」という季語があるので、重複した
感がないとは言えないが、秋の音が、人の微
妙な心を瀟殺するように聴こえるのだ。
今年度は、上位入賞句を○○高校が占めた。
快挙である。
俳句を通して、素直な心が伝わってきた。
自分のありのままを、季語や自然の情景とコ
ラボさせていけば良い。
日々生きている、いのちの哀歓を素朴に
表現してほしい。十七文字の世界であって
も、いのちの普遍がある。